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ドイツ語学習者の視点 「軽やかな知識の連鎖が面白い」

猪浦メソッドとの出会いから和田資康さんに語ってもらいました。

Q 今日は和田さんに来てもらいました。

あ、こんにちは。

Q どうもありがとうございます。

いえいえ。

Q 和田さんはドイツ語がご専門ということなんですけども、そもそもなぜ猪浦さんに出会ったんですか?

予備校に通っているときに猪浦先生の「語学で身を立てる」という本を読んで、面白い…面白いというか、こういう言葉の読み方というか分析の仕方というのを順序立ててしっかり書いてくれる先生、あと翻訳のお仕事などの内容など、そういうことに対してざっくばらんに書いてくださる方がいて、すごくイメージしやすかったということですね。

Q 僕は「語学で身を立てる」のイメージと、実際に会ったときのイメージが大分違うんですよ。(笑)

あ、私もそれは言いたかったですね(笑)。

Q 「別人やないか」って最初思ったような感じもしたんですけどね。

僕もそう思いましたね。はじめあの本を読んだ限りでは非常に優秀で色んな言葉ができて、おしゃれな感じで、色んな音楽もしてて、絵もしていて、っていう感じの人で、ある意味近寄りがたい人かな、と思ってたんですが、実際に会ってみると非常に楽しい方でした。

Q いやいや、そんなに固くならなくて良いですよ(笑)。悪口もどうぞ(笑)。

んー、そもそも語学の先生というのは教えるときに毎日1時間頑張ってやりなさい、とか妙に楽しくない根性論みたいなのを教えられるだけで、言葉を勉強していて「楽しいなぁ」ということを感じさせない人が多かったと思うんですね。

そこを猪浦先生っていうのは、言葉のレベルを上げていって苦労をして「こんだけできるんだ」という感じじゃなくて、「こういう事を知っている」という知識の連鎖が面白くて、そういうことを重々しくなく軽やかに楽しく説明してくださる方ということで、そういうところが僕は肌が合うという感じがしました。

Q あ~、やっぱり肌が合う人と合わない人といますよね、どうしても…。先ほど「ドイツ語の体系的な」ということを仰ってましたよね。先生が体系的に説明している、とか。僕が知る限り、ドイツ語っていうのは細かい分析が必要なような感じがするんですよ。英語とかは分析が必要ないとは言わないですけど、辞書から意味を取って貼り付けていけるんですけど、ドイツ語は全然そんな感じにはいかないので、元々みんなそんなに分析的な思考ってのがあるんじゃないのかな、と思ったんですけども。それでも先生の授業を受けてみたいとかお思いになったんですか?

分析的な部分に関連して?元々僕はあの本を読んで「分析的に言葉を捉えるやり方からスタートしてみてはどうか」というヒントをもらったので。猪浦先生に会って分析的なものを吸収しようという姿勢ではなかったです。どちらかといえば、猪浦先生のどんなことを知ってるのか、とか、どういう事が好きなのか、とか、どういう話をしていて楽しいのか、とか、そういうのを聞きたいな、という、そういう軽い気持ちのほうが多かったです。

Q 先生の授業を受けてみてから、和田さんの学習の方向性みたいなところで変化はありましたか?たとえば、今まではドイツ語だけにのめり込んでいくっていう感じだったのが広がった、とかですね、違う方面に興味を持ったとか、そういうのはありますか?

例えばドイツ語を勉強して、こういう現象というのはちょっと変わっている、と思ったりして。それは他の言葉で同じ現象があるのか、とか、そういうふうにして自分で知識というか想像力で、ものをつなげていくというところ…。

例えば文法書なんかを1ページ目から最後まで読む、とか、そういうことは立派だとは思うんですけども、それだけじゃ人に説明するときにちっとも面白くない、ということになるんですね。

そうじゃなくて、例えば自分がこういう事を勉強しました、それから他にこういうことが似ているな、とか、こういうことが他の言語では行われているな、とか、似ているな、とか、そういうことをどんどんつなげていって面白く見せてくれる。ですから、先生が面白いのは、面白い知識というのが他にもあるんじゃないか、とか、こういうのが似ているんじゃないか、とか、そういう類推の面白さみたいな、そういうところにひかれていました。だからはじめから体系性っていうのを意識させない面白さ、というように思いました。

Q たしかに、語源とかすごく興味深いですよね。英語とかフランス語の比較を聞いていると「あ~、そういうことなんだ」って初めて納得できるようなことも僕は多かったですけども。

そうですね、語源というかイメージの広がりなんかを重視して色々調べ物をしていくっていうのは、ものすごく発見が多くて面白いと思うんですね。当たったときも当たらなかったときも、考えているのがこんなに楽しいことなのか、ということを感じさせてくれる授業というのが多いと思います。

Q 和田さん自身も単語のイメージとかそういう関係で個人的に研究とかされてるんですか?

これまでメタファーの関係とか。例えば物事を理解するときに、物事を考えることはすごく抽象的なことなので、他の行為で具体的に表さなければいけない、そういうときにメタファーというのを使うんですね。例えば、食べ物を食べるときに「~を飲み込む」とか「~を良く噛む」とか「~を良く消化する」とか、そういうふうにしていくとものを具体的にしていくイメージができると思うんです。そういうイメージのつなげ方というのを、それぞれの言語でどういうふうになるのか、とかそういうところに興味があります。

Q 猪浦さんの悪いところっていうか、悪口を言ってみますか?(笑)このままだったら中立な視点がなくなるかもしれないし。(笑)

うーん…、これは状況によって良いか悪いかっていうのがだいぶ変わるんですけども、こうであるべきだ、という説明とかを…。

真面目な人から見ると、猪浦先生の言っている事っていうのはおふざけみたいなところがあって。それはでも、確かに真面目さという点から考えると、あんまり真面目じゃないと思うんです。真面目じゃないんですけども、そういうふうに考えても良いんじゃないの?という軽さがあると思うんです。僕の中で思うに、そういう考え方をするのは、猪浦さんというのは確かに面白い考え方をしていて、正しいかどうかはともかく、面白い表現をしてくれる。

僕は例えばその逆に、個人的に面白くないのは「これは正しいです。こういう考え方は正しいから、こういうふうにしなければいけません。」というように、いかにも正しそうに言ってつまらなく教科書みたいに言ってくれる人はあまり好きじゃない、と。

そういう部分で、あくまでもふざけて言っているようで、僕のような人にとっては正しくて、真面目に杓子定規に考える人にとっては「嫌だな」と、「怒っちゃうぞ」という部分があるんですね。

Q 真面目な人たちが好きなタイプの先生は肌に合わなかったって事ですよね。肌に合うっていうことは、知識が連鎖的に出てくる、と。そういうような、ファンというか、面白いっていうか、そういう要素を重視して学んで言ったら良いんじゃないの、というような姿勢の人のほうが肌に合うってことですね。

そうですね。例えば、こういう立派な文法書があるからこういう順序でやりなさい、とか。例えば英語でTOEICが950点にならなきゃいけないから、こういう風な勉強をしなさい、とか、そういうふうな「やらなければいけない」という観点でやる勉強よりも…。

例えば猪浦先生というのはおそらく、自分の知っている知識とか身近な関心から物事をつなげていって、自分なりに説明できる興味のつなげ方をされていると思うんです。非常に具体的で、その人が実感したことをそのまま知識として、みんなの前に出せる。

例えばそれを「これが正しいですよ」というふうに受け入れちゃって、そのまま自分の中に吸収して、それを何も加工しないで「正しいですよ」と出すのでは芸がないと思うんですね。そこらへんのところで、知識の出し方というか面白がり方、知識の面白いつなげ方、そういう点で僕は非常に感銘しました。

Q 猪浦さんの講義内容って、一回聞くだけじゃあんまり良く理解できない気がするんですよ。初めて自分で問題とかに突き当たって検討したときにやっとおぼろげに答えが見えてくるじゃないかな、というように思って。ある意味やはり自分で考えて自分でやる人じゃないとツライのかな、とは思うんですけどね。答だけを教えてくれるタイプじゃないので…。

答えを分かれば楽しいという方には、ちょっと物足りないかな、というところがあるんですが。一つ何かを見つけたら他にもどんどん連鎖していくっていうのが楽しい方にとっては非常に楽しいと思いますね。辞書を見て、言葉の定義を知って、それで満足という人と、一つの動物の事を調べて、こういう伝説があるのか、といって色んな想像がリンクしちゃう人と。そういってまだまだ分かりません、という答えがない事をおもしろがれる人が良いんじゃないか、と思います。

Q レアな人たちですよね。(笑)

そうですね、レアな人たちかもしれませんね。(笑)

Q 和田さんは好きなタイプなんですね。

自分と同じだから好きというわけじゃなくて…。自分には元々…こういうふうにやったら正しいということを影響力のある人が言うとそれに影響されてしまうところがあって。誰でも自分の中に権威というのがあると思うんですね。それを正しいというふうに思っちゃう部分があると思うんです。それは一応大切な部分だと思うんですけども。

自分が普段から、小さいときから疑問だったこととか、こういう事は変だとか、そういうことを軸にして自分の体験に結びつけながら、気楽に語学の学習をしていくとか、そういうふうにしていけば、ひとりひとり違った語学のやり方があるんじゃないかなぁ、と思うんですね。

Q 真面目の殻を小さい頃から何個か、少なくとも日本に生きていたら、与えられちゃうと思うんです。なんか固い殻をね。その固い殻を突き破った姿を見せてくれている感じですよね?

そうですね。真面目な殻っていうのは世間の大多数っていうのが、こういうふうにしなさい、こういうふうにしたら正しいですよ、こうしたら安心ですよ、と、そういうことなんですけども。ただどちらかというと、そういう考え方に染まる以前というのは、おそらくもっと変で矛盾があって、変なことを色々考えていたはずなので。子供の時に色んな疑問を持ったりして、図鑑を楽しんで眺めていたはずなので。

そういうことを猪浦先生はいまだに大切にしているのではないか、と。それを原点にして勉強した結果、みなさん面白い人が楽しめる、そういう内容になったんじゃないか、と僕は推測します。自分の感覚に素直にその方なりのやり方があって良いじゃないか、と僕は思って。猪浦先生の場合は、いかにも肩肘張らずに知ったことをいかにも「これは面白いよ」と出してくれる。そういうところが良いですね。

Q なるほど…。人それぞれに猪浦先生の捉え方があるんですね…。三者三様だ、今のところ。(笑)他に質問はありますか?

Q 質問じゃないんですけども、和田さんとかと話していると本当に色んな事を表面だけじゃなくて裏側まで考えているんだなぁ、というふうに思って。話していてすごく楽しいんですよ(笑)。それでどうなんだ、っていう話でどんどん聞きたくなっちゃって。やっぱり表面的なものだけじゃなくて、本質なのかどうかは分からないですけど、色々探求していく人と話すのは僕にとっては本当に楽しい時間ですね。

ええ。僕から言うと、別に重苦しく真面目に探求しているんです、という肩肘張ったところは特に意識は無くて、普段なんとなく疑問に思ったことを素直に疑問だと言っている。それをなるべく疑問に思ったことを、なるべく面白がるようにして、やっていきたいと思っています。そういうのを素直にしていって、物事を見ようかな、というスタンスを持ちたいです。

Q 将来の猪浦道夫になるかもしれない(笑)。じゃぁどうもありがとうございました。

ありがとうございました。

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